「中間総括報告書」と題された4万字近い文書。昨年の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦氏(47)の選挙運動に、PR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓社長(33)がどのように関与していたかが解析されている。神戸地検と兵庫県警がメルチュへの強制捜査に踏み切ったのは、この文書を入手して間もなくのことだった。 【驚きのツーショット】「え!? 近すぎひん?」赤面の斎藤元彦氏とPR会社社長・折田楓氏の密着ショット ◆◆◆
2月7日、事務所や自宅などを家宅捜索
社会部記者が言う。 「神戸地検と兵庫県警は2月7日、メルチュの事務所や折田氏の自宅などを公職選挙法違反(被買収)容疑で家宅捜索し、スマホなどを押収しました。今後、立件の可否を判断すべくメッセージのやり取りなどを本格的に分析していきます」 ことの発端は昨年11月20日、県知事選の3日後に折田氏が「note」に記事を投稿したことだった。 「記事には斎藤氏がメルチュの会議室で折田氏らと打ち合わせをしている写真が掲載されるなど、同社が業務として斎藤陣営のSNS戦略を担ったと読める内容だった。その後、斎藤氏側からメルチュに71万5000円が支払われたことが明らかになり、これが『インターネットを利用した選挙運動の対価としての報酬支払い』に該当し、公選法に違反する疑いがあると指摘されました」(同前) 斎藤氏側は代理人弁護士が「71万5000円は、公選法で認められたポスターやチラシのデザイン制作費などの支払いだ」として請求書を公開。折田氏の投稿については「盛っておられる」「SNS関連はボランティア」などと主張した。
任意提出の要請に十分に応じず…
「地検と県警は昨年12月、斎藤、折田両氏に対する刑事告発を受理。早々に斎藤氏側から資料の任意提出を受け、後援会がメルチュに71万5000円を支払ったことは確認していた。加えてメルチュが主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行っていたことを裏付ける必要がありますが、同社側はスマホなどの任意提出の要請に十分に応じてきませんでした」(捜査関係者)
実態解明のための“武器”
だが、捜査当局は、実態解明のための“武器”を手に入れたという。 「本件を重く見る有志がSNS情報の解析や自治体への情報公開請求などを駆使し、メルチュの『主体性・裁量性』を立証する証拠を総括的にまとめた報告書を作成。当局にも提供し、結果的に強制捜査となった。押収した折田氏のスマホなどと合わせ、立件の可否を検討する方向です」(同前)
《公約の作成そのものに関与》
小誌は今回、その「SNS解析記録」を入手。内容を読み解いていこう。 まずは、斎藤氏の代理人が示したメルチュ宛の請求書。解析記録では、同社が他の自治体で請け負っていた仕事の請求書や見積書との類似点が複数指摘されている。そのうえで、請求書の内訳として記された「チラシデザイン制作費 15万円」については、次のように分析されていた。 《ビラ(チラシ)の内容は単なるデザインの域を逸脱。公約スライドをさらに簡略に図式化したもので、公約スライド制作以上に、公約の作成そのものに関与》 《ビラでは、公式HP、X、X(応援アカウント)、Instagram、Youtube、それらを総合したリットリンクへのQRコード(計6個)が掲げられ、「各SNSで、幅広い情報を配信しています。フォロー・いいね等をして応援していただけると幸いです」と記されている》
折田氏の公約スライドと酷似
実際に選挙中に配布されたチラシを見ると、確かに折田氏がnoteで〈最も作成に時間を要した〉として公開していた公約スライドと酷似。のちに物議を醸した公約達成・着手率〈98.8%〉を盛り込むなど、斎藤氏の選挙運動の根幹部分と言える。そこにSNS上での活動が併記されているという時点で、「チラシデザイン制作費」の支払いが、実質的にSNS上での活動に対価を支払ったのと同等であると指摘しているのだ。
折田氏が主体的・裁量的に運用をしていた“重要な痕跡”
さらに、noteにはもう一つ、重要な痕跡が残っていた。折田氏が自らの功績として、選挙中のSNS運用についてアピールする中で添付した〈X本人アカウントの投稿〉の例示画像。斎藤氏本人名義のXの投稿画面の下部に〈ポストのエンゲージメントを表示〉という文言が表示されている。 《これはアカウントにログインした者にしか表示されない事項だから、折田氏がX斎藤氏本人名義アカウントにログインできる権限があったことは明らか》 《「最終更新」は2024年11月7日午後1時31分で、note画像のそれと同一。(略)この日、斎藤氏は12時55分ころから午後1時40分過ぎまで、兵庫県多可町ベルディーホール前広場で街頭演説。無論その間、携帯端末は一切操作していない》 すなわち、折田氏が斎藤氏に代わり、SNSの本人アカウントまで主体的・裁量的に運用していたことを意味しているというのだ。 他にも解析記録では、折田氏のSNSアカウントの運用の方法が高知県で委託業務として行った方法と類似しているとして、次のように指摘している。
ハッシュタグの専門的なツール
《応援アカウントが単なる告知メディアでないことは、merchuが「令和6年度高知県SNS公式アカウント分析等委託業務」を受注する際に提出した「企画提案書」を見るとよく分かる。merchuは同業務において、SNS分析ツール「socialdog」を導入することを謳っている》 SocialDogは、ハッシュタグに関する投稿の反応などを測定し、戦略改善に繋げる専門的なツールだ。実際、折田氏はnoteで〈斎藤さんへの世の中の見方を変えていく上で重要だったのが、ハッシュタグ「#さいとう元知事がんばれ」です。(略)公式としてタグを一本化して発信することで、応援の流れに方向性を提供する必要があると考えました〉と記すなどハッシュタグの統一に拘っており、知事選でもSocialDogを利用していた可能性が高い。しかも、高知県宛ての「提案書」では有料版(最も高いプランで月4万円)の利用を示唆しており、 《もしmerchuが今回も有料版のsocialdogを利用していたのであれば、その作業がボランティアであることなど到底考え難い》
「御指摘の内容は事実ではありません」
このように様々な角度から、折田氏が斎藤氏側が主張するようなボランティアではなく、いかに主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行って、その対価を得ていた疑いが強いか、を指摘しているのだ。加えて小誌が報じたように、斎藤氏陣営の幹部が支援者に送った〈Sns監修はメルチュさんにお願いする〉というLINEも残っており、当局は重要証拠と見ている。 「折田氏は現在も兵庫県の地域創生戦略会議のメンバーですが、昨年12月の会議は欠席。沈黙を守り続けています」(県関係者) 一方、周囲から説明を求められても、「弁護士に聞け」としか話さないという斎藤氏。小誌は「折田氏側が選挙運動の報酬として71万5000円を受け取ったのは明らか」などとする解析記録の指摘について代理人に見解を求めたが、「御指摘の内容は事実ではありません」とのみ回答があった。 “折”姫と“彦”星が刑事たちからホシ(容疑者)と呼ばれる日が来るのか。捜査は佳境に入りつつある。 ◆ ◆ ◆ 「 週刊文春 電子版 」では、斎藤氏に関する 短期集中連載「冷血の知事」 を掲載中。第1回では、折田氏との蜜月などについて5ページにわたって詳報している(今なら99円ですべての記事を読むことができます。99円キャンペーンは5月7日10時まで)。