トップ頭脳の“争奪戦”の様相だ。欧州連合(𝐄𝐔)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長はこのほど、研究者らを欧州に呼び込むため𝟓億ユーロ(約𝟖𝟏𝟒億円)相当を拠出すると発表した。フランスのマクロン大統領も同調し、𝟏億ユーロを拠出することを明らかにした。
フォンデアライエン委員長は「科学は投資であり、私たちは正しいインセンティブを用意する必要がある。𝟐𝟎𝟐𝟓年から𝟐𝟎𝟐𝟕年にかけて新たに𝟓億ユーロ規模の支援パッケージを用意することを発表する。欧州を研究者にとって魅力ある場所にする」と述べた。
関係者によれば、この資金は研究プロジェクトの助成や、外国人研究者を招聘するための大学の費用補填などに使われる予定。
欧州が急いで大金を準備する背景には、トランプ米大統領が同国の主要大学と対立を深めていることがある。トランプ氏は今年𝟏月の就任以来、米国の大学に対する攻撃姿勢を強めており、連邦資金の凍結や調査の開始、留学生のビザ取り消し、その他様々な要求を行ってきた。
トランプ氏は先ごろ、ハーバード大学への免税措置を撤回すると表明。これに対しハーバード側は、税制を不当に利用するものであり違法と反発を強めている。
マクロン大統領は「経済モデルが自由な科学とイノベーションに大きく依存し、過去𝟑𝟎年間、欧州よりも多くのイノベーションを生み出し広く発信してきた、あの偉大な民主主義国家が、このような過ちを犯すとは、誰も想像できなかっただろう。しかしそれが現状なのだ」と述べた。
ただ、欧州の大学は米国の大学に比べて財政的余裕に乏しい。トップレベルの米国人研究者を惹きつけるのに必要な資金面の“格差”を埋められるかどうかは不透明だという見方もある。