ロシアの「戦勝記念日」に異変が生じた。5月9日、プーチン大統領がモスクワの赤の広場で行った演説は、戦争の現実を色濃く反映していた。ウクライナ東部のバフムトに向けたロシアの攻撃が激化する中、参加した戦車は第2次世界大戦時代の1両のみ。この現実は、兵器の消耗を物語っている。昨年のパレードでは最新の戦車が並んだが、今年はまさに「戦力不足」を露呈させた。
プーチン大統領は演説で「西側のエリートが仕掛ける本当の戦争」と語り、ロシアの愛国心を鼓舞する一方、中国への敬意を表す発言も。これは、国際社会におけるロシアの孤立を打破しようとする狙いが見え隠れする。だが、同時に「国際法を完全に潰そうとしている」との自己矛盾を抱えるその言葉は、国際社会からの信頼をさらに失う結果となるだろう。
さらに、ロシア各地での軍事パレードが少なくとも21の都市で中止された背景には、先日のドローン攻撃の影響がある。安全上の理由から、国民の間には不安が広がっている。ワグネルの創設者プリゴジンは、バフムトでの進軍を報告するも、戦況は思わしくない様子。
ウクライナの反転攻勢のタイミングが注目される中、プーチン政権は内外の圧力にさらされ続ける。この戦勝記念日が、ロシアにとっての新たな岐路となるのか、目が離せない。